この時期、都内公立校の小学校4年生の先生の訪問が増えます。東京の染文化と地場産業ということで、江戸小紋の工房 株式会社 富田染工芸 と染の里おちあいが新宿区ミニ博物館に指定されてます。東京都の小学四年生の副読本にも掲載されている事から、先生方が来苑されます。
その際にお話しするのは分業の仕組みです。分業で一反の反物を染める着物文化は、たくさんの業種があります。湯のし、染色補正、洗い張り、蒸し、引き染め、とそれぞれに業種が成立しています。
その概ねの業種が集積しているのが新宿区です。染物は新宿区の地場産業です。しかし、着物が日常着ではなくなり、さらに不況による消費の冷え込み、流通の変化、小売りアパレルの構造的変化によって地場での染物が継続できずらい時代になりつつあります。そんな中でも、染の里おちあいは江戸更紗を中心に今でも手染めによる製品づくりに精進しております。手染めによる製品づくり?一体何を?と思われるかもしれませんが、着物や帯、浴衣はもちろんのこと、和雑貨をたくさん製造してております。
職人と話すのは「生地」だけつくってもようがない!生活に必要なものを作らなければ、伝統は消えていってしまう!と危機感の共有です。時にはトン珍カンな製品を作って失敗もありますが、それも成功するまでのプロレスであります。毎回毎回ヒット商品を作ることなど難しいのです。ですから、職場では失敗したことをなるべく「ナイストライ」と言うように心がげてます。
先日も来苑頂いた先生から「製品づくりに心がていることは?」と問われました。多分先生は「丁寧に文化を守り、、、、」のような伝統を守ることにどれだけ注力を注いでいるか!という回答を期待していたように思います。
しかし私は「売れる商品を作ること」と即答しました。 なぜなら、伝統的な工法を守る事は製品づくりそのものが守る行為なので、そんな事は心がける事と考えません。それはいつもの通りこれまで通り、手を抜くことなく染続ける事そのものが守る事だからです。
あえて心がける事とは、やはりお客様に手に取って喜んでいただける製品を作る事なのです。時代は変化します。コロナ流行によるテレワークや自宅待機、自粛など今までに経験したことのない世界を私達は生きています。
そんな時、人の心を打つような商品を作っているか?作れるか?喜んでいただけるか?は常に念頭におきながら、色使い、使い勝手の良さを、使う人、プレゼントする人、もらう人の気持ちになって考えるようにしています。
そんな製品づくりをぜひ来苑頂き見学して欲しいと思います。緊急事態宣言の中、つくづくそのような思いが高まり、相まって、忙しいであろう先生方が来年苑頂くのが嬉しくて、思いを綴りました。
玉ねぎの皮を煮詰めて染めたスカーフ
これまでも、これからも愛される染工房を目指して、染続ける「染の里おちあい」をどうぞよろしくお願いいたします。
下の写真は大正時代の工房
大正時代の若い職人
現在の商品、帯
学校への出張染体験も行っております。
過去の実績
・藍の生葉染体験 くるみボタンづくり、手ぬぐい染、
・インディゴ藍染体験、Tシャツ染、
・ハンカチ型染体験
・はがき型染体験
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