昔ながらの技法が現代に続く・染の話

染め技法の色々~絞り染めの話

布を染めるという行為は古く、中国では紀元前3000年頃から染色が行われていたそうです。

日本でも縄文時代の出土品にみられるほど昔から染色は行われてきました。

古くは天然由来の草木や鉱物などが用いられました。

古代から延々と続く染色の歴史ですが、技法や染料は時代によってさまざまに変化をしてきました。

長い染色の歴史の中で藍染の技法の確立や泥染めなど染料や色止めの技術が進歩してゆきます。

江戸時代になると糊を使った型染が普及し、江戸小紋など柄付の技法が進歩します。

さらに明治期、化学染料が輸入されるようになると安価で鮮やかな染が可能になり、柄物は庶民的なものとなり普及しました。

銘仙など鮮やかで比較的安価なものが一世を風靡しました。

現在では使用できない成分も使われていた当時の染は今の時代に染められたものよりも鮮やかです。

現在、多くの染物は化学染料を用いて染められていますが、安全に配慮し使用できる成分は時代ごとに代わってきており、厳しく成分検査なども行われます。

着物や洋服の色や柄を安価に、自由に楽しめるのは化学染料のおかげが大きいのです。

 

柄を染めるために染まらない部分を作る「防染」

布を染める技法も様々です。

直接染料を溶かした液に浸して染めたり(浸染)、友禅や沖縄の紅型のように刷毛などで染料や顔料を布に染める、またはパソコンで編集した柄を直接プリンターで染める事まで、現代は多種多様の技法が使われています。

そんな様々な技法のある中、布を染めるとき柄を付けるためにあえて染まらない部分を作るということが大事なのをご存じですか?

「防染」といい、文字通り染まるのを防ぐ加工を施すことです。

いわゆる先染め(布を織る前に糸を染めておく)のかすりなども糸の段階で計算して「染めた部分・染めない部分」を意図的に作り織りあげることで柄を施しています。

大島紬などは経糸横糸ともに細かく染め分けをし、織りあげることで世界にも例を見ない精巧な絣柄を現しています。

又、久留米絣のように細かい絵を織り出しているものもあります。

 

天平の三纈(サンケチ)

後染め(布にしたものを染める)も様々な防染による染めがあります。

古い時代から板や糸、蝋などで布をふさいで防染をし、柄を施す技法が用いられてきました。

天平の三纈(サンケチ)という言葉をご存じでしょうか?

夾纈(キョウケチ)・纐纈(コウケチ)・﨟纈(ロウケチ)の3つで、大陸より伝わり古くは奈良時代頃から行われてきた染色技法です。

纈は絞りのこと。

現在も正倉院御物としてその当時のものを目にすることが出来ます。

簡単に言うと「夾纈」は模様を彫った板に挟んで染める、「纐纈」は糸などでくくるいわゆる絞り染め、「蝋纈」は溶かしたロウを塗り生地をコーティングして染める、などそれぞれ布に染まらない部分を作って、それを模様としてあらわします。

中でも「纐纈」絞り染めは世界各地でもっとも古くから用いられてきた染の技法です。

特に日本は他国に類を見ないほどの多様性と精巧な絞り染めを生み出しました。

 

産地も多岐にわたりますが、特に有名なのは京都の京鹿の子絞り、静岡の有松鳴海絞り・岩手地方の南部絞りです。

 

京鹿の子絞りは疋田(ひった)と呼ばれる凹凸のある小さな四角形のしぼによって柄をあらわすのが特徴です。

鹿の子とは疋田のしぼが小鹿の斑点に似ていることからそう呼ばれます。

主に絹地に染められ、鹿の子絞りと合わせて金糸なども用いた豪奢な刺繍が施されたいわゆる晴れ着なども多く作られます。

 

南部絞りは古くから岩手など南部地方でつくられ、染料は赤=茜、紫=紫根と貴重な植物を用いた草木染です。

 

有松鳴海は木綿の染が多く浴衣などの身近で実用的な製品も多く作られています。

「縫い絞り」「雲絞」「雪花絞」などが代表的です。

「雪花絞り」とはいわゆる板締め絞りのことで、雪の結晶のような規則的なパターンが特徴です。

現代にもなじむ幾何学的なデザインで現在も浴衣や手ぬぐいなどで大変人気です。

 

絞り染が広く普及し、現在も親しまれているのは技法がシンプルな事が大きいと思われます。

 

雪花絞りを染める

雪花絞りをご自宅で染めてみませんか?

特別な道具が無くともご家庭でも楽しむ事が出来ます。

基本は生地を折り畳み板に挟んで染料に浸けるというシンプルなものですが、柄には様々なバリエーションがあります。

 

基本の折りはまず縦長にジャバラ状に折ることです。

そして柄の違いを出すにはこの先の折り方の違いが大きくかかわってきます。

そこからさらに細かく同じくジャバラ状に折って行くのですが、折り方に正三角形、二等辺三角形、四角、麻の葉などいろんな折り方があり、それで柄が変わります。

ご自宅で染めるには、生地は綿100%の晒(さらし)がおすすめです。

手ぬぐいの長さは90㎝~1m位が一般的ですが、もっと短い物でも大丈夫です。

出来れば折った生地と同じ大きさ、同じ形の板があると良いのですが、家にあるものでも代用できます。

割りばしやカマボコの板など、同じものが2つあれば大丈夫です。

また、色の付け方でも見え方が変わります。

一色でもきれいですが、三角の角の位置によって色を変えて染めると全くイメージが変わります。

染料は木綿の染まるものでしたらば何でも大丈夫です。

染め方はそれぞれの染料の染め方に沿って染め、洗い、色止めをしてください。

2度と同じものは作れないのも絞り染めの魅力です。

是非挑戦してみて下さい。

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